歌が無ければダメなのか 〜 Angel Beats!3話感想

私は細かな設定ミスがあると冷めてしまう性格なので、ビール瓶で殴られた場合にありうるのは脳梗塞ではなく慢性硬膜下血腫でしょーと突っ込みたくなった訳ですけど、まあそこはぐっとガマンしまして。

http://d.hatena.ne.jp/tomatotaro/20100417/1271515982
運命との戦いが「父を乗り越える」といういつもの問題に摩り替わってしまっている。
現に岩沢が「歌い続けることが、私の生まれてきた意味なんだ」とインスタントな自己啓発をしたことで、葛藤は解決してしまう。これがエヴァの世界ならばまあそれもアリなんだろうが、でもアイデンティティを再確認したところで原因となった脳梗塞は治らんからなぁ。
むしろ「脳梗塞にならなければ、私は歌い続けられた」とトラウマループに陥らないか。トラウマを解除するには、キャラクターを変えるしかないのだ。

この意見には大体同意でございます。
私の意見では、あの作品中の世界はLimbo(=リンボ、辺獄、天国と地獄の中間、昇天できぬ魂が彷徨う世界)ではなく、臨死体験世界をユング的に解釈した集合無意識的世界かなあと想像するわけですが*1、Limboつながりで思い至ったのが平沢師匠(=平沢進)のこと。
師匠は歌を歌うんですけどギター弾きとしても名手でして、師匠本人はギターは嫌い、指が痛くなるからとツンデレなことを申しておりますが、という訳で師匠の変態ギター集。
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こっちは普通の
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で、師匠を見て思ったのは、岩沢は歌わなきゃならなかったのかということ。考えれば、ピアニストはピアノで、バイオリニストはバイオリンで、トランペッターはトランペットで、そして指揮者は音を発さずとも自らの情熱を音楽に表現するのです。
岩沢は歌を歌わねばならなかったのか。歌を歌わないギタリストとして生きる道を探ることはできなかったのか。
id:tomatotaro氏の言う通り、岩沢の失語症が治癒の見込みのないものであるならばなおの事、声以外の道を見つけねば彼女は永久にLimboに囚われることになる。
あるいはこの話は、失語症という現実と向き合わなかった岩沢が声を取り戻すためのリハビリに取り組むことを決心したということの比喩なのだろうか。うーむ、ギターを置いたまま昇天した(=ギターを持ち歌う自分を振り切った=過去と決別した)ということは、こちらの可能性もありうるとは思うのだけど。

*1:つまりあの世界で「昇天」した人は天国に行くのではなく現実世界に戻っている。