増税議論を誘導している首魁は誰か

最近本当に忙しい。腰を落ち着けて考えたくても全然手にもつきません。
暇人也氏のところで重要なエントリが上がっていたので。

VARを推奨する計量経済学者として有名なクリストファー・シムズプリンストンのHP)が、ゼロ金利制約下における金融・財政政策について小論を書いた。
Economist’s Viewで全文が紹介されているほか、サムナーも自分と意見を同じくするものとして取り上げている。
以下はその第1節の前半と第5節の後半の拙訳。
(中略)
財政政策がやはり重要なのは、適切な説明が実施されれば、将来の金融政策の行動についての約束の宣言が現時点の政策行動を伴わない場合に信頼を得られないかも知れない、という問題を改善するからだ。大規模な財政政策の効力は、インフレや将来の金融政策に対する意味合いについての議論を伴った場合、人々に信じられる可能性がより高くなる。


最近の米国、そして私が思うに日本でも、政府の債務や財政赤字政策に関しての議論は実質ベースでなされる傾向にあり、債務が部分的にはインフレで軽減されるということを明確に認識していない。もし人々が、現在の財政赤字は将来の大規模で不確実な増税や歳出削減に対応すると信じるようになれば、財政赤字の景気刺激効果は無きに等しきものになるだろう。
2010-02-04

強調部は自責。
まさに、現在の日本が陥っているジレンマが明言されております。
最近、自民党の与謝野氏の著書が呼び水にでもなったのか再び消費税増税論が現れており、連立政権は4年間は消費税率を据え置くと確約したようですが(何しろ忙しくてニュースすら余り見れていない)*1、思えばかつて橋本政権の時代、消費税が3%から5%に増率されたときにも消費の減少によって予想以上に税収が上がらなかったのですが、私がつくづく不思議に思うのは、そう遠くない過去にこのような悪い例があるというのに、一体なんでまたこの酷い不況時に消費税増税なんて言い出すのかってことなんですよ。
こういう話になると、いわゆる財務省悪玉論みたいな話もあるわけです。財務省にとってプライマリーバランス黒字化は至上命題であって、いかなる方策を採ってでもプライマリーバランス黒字化を達成するという。
でも単純な話、日本には経済を俯瞰してみることのできる組織体が政府内に存在せず、ゆえに財政政策と金融政策の混乱に繋がっているのではないか、と私は思うのです。
政治家は選挙で当選さえすれば政治家ですので知的強者かといえば一般人とそれほど変わらないわけですし、官僚は優秀な人材こそ多いものの自身の権限の及ぶ範囲でしか仕事ができませんしそれが官僚組織というものです。
日銀も財務省も、自身の権限の及ぶ範囲で仕事をしていると考えるしかないんですよね。
ですから、本来彼らを御す政治家がマクロ経済に明るくないといけないのですが、殆どの日本人にとっては「マクロ経済って何」みたいな状態で、同様に政治家もそんなもんだと思うしかないのでしょう。

*1:http://d.hatena.ne.jp/bunsekijakusha/20100128/1264674957、与謝野氏は最近NHKの討論番組にも出てましたが、声のハリの無さから見ても完全に「老人」でしたね。