これもまた反経済学的な話

ネットでは勝間vsひろゆき対談でひろゆきが圧勝したとかいう話で持ちきりですけど、ひろゆきに限らず多くの人が言う「日本は他の国に比べれば幸福だ」という言説について。
http://stockkabusiki.blog90.fc2.com/blog-entry-1086.html
デキビジ 勝間和代 VS ひろゆき (幸福度編) - さかなの目
以下のWebサイトでは年収を入れることで世界の上位からどれくらい裕福か計ることができます。
Global Rich List
これは事務屋稼業さんも取り上げていたのですけれど、ケインズ説得論集から。

サミュエル・ジョンソンがイギリス北東部のスカイ島を訪問したとき、この島では卵二十個を1ペニーで買えるという話を聞きました。そのとき、こう答えています。
「だったら、この貧しい島では卵が豊富なのではなく、お金がよほどないのでしょう」

先のリンク先で仮に年収250万円で入力すると上位11%以内のリッチという結果が出ます。ですが次のサイトで年収250万円の位置をチェックして見て下さい。(ただし、105円/1ドル換算のようです。2010年5月8日時点)
http://d.hatena.ne.jp/solidarnosc/20091101/p1
仮に年収が250万円あっても、実質その7割程度しか可処分所得として消費に当てられません。つまり175万円、月に均せば15万円弱となります。
では、まず社会保障費や各種税として支払わねばならない75万円を先のリンク先で調べると、…なんと上位14%のリッチ。つまり世界中の人の86%は日本に住む年収250万円の人の税金分すら払うことができないのです。*1
日本は税金が高いから、と思うかもしれません。では、仮に月に1万5千円を通信費と光熱費に使うとします。年額では18万円ですが、これは驚くなかれ上位24%以内、14億3千万人以内の豊かさということになると。
日本は確かに、世界の大勢と比べれば幸福であるに間違いありません。安全な水、食品、治安の良さ。ですが、日本で手に入る安全なキャベツ一個が世界の貧困層の一日分の所得よりも高く、義務教育に掛かる経費すら貧困層の年収よりもはるかに高いというとき、そもそも比較することが正しいと言えるでしょうか?
日本における貧困問題、それは日本で生きるに必要な経費を賄い切れないという問題です。
日本の地方の集落に住むお年寄りの受給する年金は、世界の大半の人の年収よりも間違いなく高いでしょう。ですが彼はその年金の中から世界基準で見れば間違いなく贅沢品である乗用車を維持する経費を捻出しなければならないかもしれません。
乗用車を持たなければいい?
彼は膝を痛めた奥様の通院や買い物の利便のためにどうしても自動車を維持しなければならないのかも知れません。
先のスカイ島の例をもう一度引きます。
卵二十個が1ペニーで買える島は、卵が豊富なのではなく単に貧しいのだと。

ケインズ 説得論集

ケインズ 説得論集

*1:なお、90円/1ドルでは75万円=8333ドル、上位8億2千万、上位13.67%となります。