豚の尾かじり的な社会地獄への道は善意で舗装されている

多くの人は経済成長の停滞により「先立つもの」の量そのものが減っている事実よりも誰か既得権者が搾取しているという考えが先にたってそいつらから分捕ることばかりに汲々としている。
http://d.hatena.ne.jp/sunafukin99/20090704

豚はストレスに駆られると同じ檻で囲われている仲間の尾をかじるという。

おそらく、誰かが邪魔をしている、悪い奴がいるんだ、政治家が悪い、官僚が悪い、大企業が悪いと誰も彼もが言っているのは*1主従が逆である可能性もある。
つまり、うまくいかないのは誰かが悪いのではなく、うまくいかない原因はそれらにあると思い込もうとしているのではないかと思うのだ。うまく行かなくなった結果として、誰か悪い奴が邪魔をしているからうまく行かないのだと考えているのだろう。*2

日本が上手くいかなくなっている理由、それは特定の何かが悪いというより、社会全体が制度疲労を起こし、中国以下途上国からのキャッチアップ、少子化高齢化といった問題に対応しきれなくなっているからだ。
少なくとも、政治家も官僚も日本の社会を悪くしようと思って政策を行ってはいないだろうし、大企業だって日本の産業を、経済を支える機能を担っている。
少なくとも、誰もが良かれと思っている筈なのだ。
社会をメチャクチャにしたいと思って行動している人間はいない筈なのである。

かくして、「昔の社会のあるべき論」に基づいて設計された制度が、その前提と合わない生活を始めた(既に少数派でさえない)多くの"現在を生きる人達"の生活に不便や苦痛を強いることになる。
2009-06-01

安倍元総理とか典型的ですけど、保守系政治家の中には「子供は母親が自宅で育てるべき」という信条を強くもっている人がたくさんいるんです。
2009-04-08

上記について、これ、その通りであることが下記でも触れられている。

ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム 平成21年6月9日(火)「小児医療・周産期医療・病児保育」議事録21ページ

(病児保育は働く女性にとっての喫緊の課題であるという話について)
○勝間委員
加えて、病児の保育はそもそも母親の役割であるという強いドグマがあるような気がします。こういう文化的な背景の壁というのはいかがでしょうか。
○駒崎氏
おっしゃるとおりです。私は、こうした話をいろいろなところですると、この前、京都の議員さんのところで、「君、それは、母の愛はどうなるのだ」と言われました。
「母の愛は関係ありません」と言いました。
http://www8.cao.go.jp/shoushi/13zero-pro/k_9/pdf/gijiroku.pdf

この議員は、おそらくあるべき母子の姿を思い描いていて、悪意や皮肉でこのような発言をしたのではないのだろう。だが「母の愛」以前に食い扶持を稼がねば愛もないということまでは気が付いていなかった。

おそらく、世の中こういう「善良な人々」によって運営されていて、だからこそ絶望が深い。

*1:小泉改革が悪い、麻生政権が悪いというのもこの類型

*2:これを陰謀論という