「チェロを残忍に攻撃するベッドと二つのベッドサイドテーブル」

ダリ回顧展

一番面白いと思った作品でした。
余りにも「そのまんま」なタイトルであり、絵も何の隠し事も無く
「ベッドがチェロを破壊している」
という余りにも余りな表現。

見れば見るほど別世界にトリップするような不思議な感じを抱きます。
ダリに限らず、シュールレアリズムの芸術家ってタイトルのつけ方が秀逸です。
その辺のセンスは、私の好きなアーティストの曲とも何となく関係があるやもしれません。

例えば平沢進であれば
夢の島思念公園」
「確率の丘」
「暗黒πドゥアイ」
「風の分身」
など。

これだけじゃ詰まらんね。
絵に対する感想も書こうっと。


「パン籠」
ダリの描写力、画力の秀逸さをまざまざと見せつける作品です。
これは後の「世界教会会議」のガラとダリ自身や、「生きている静物静物-速い動き)」のカリフラワーの描写にも現れていますけど、写真のよう、というよりCGのような微妙な省略とエッジの利かせ方が不思議なリアリティを持っています。天才はその才能を形作る技術も一流であると如実に示す絵です。


「器官と手」
ダリの表現スタイルが既に確立していることを示す絵です。人体、女性の体と骨、手、そして血管をモチーフにしています。


「皿のない皿の上の卵」
縛られた生卵と皿の上にある二つの卵、ダリの子宮内記憶を描いたものだそうです。
縛られた卵はダリ自身、皿の上の卵は恋人ガラの射るような目を表現しているとか。溶けかけた時計のモチーフも登場しています。
画集では淡い色ですが、実際見ると赤色が印象的な作品でした。


「家具栄養物の離乳」
ダリの乳母を描いたものだそうです。
体にナイトテーブルの形の穴が開き、そこを松葉杖で支えている女性。
病弱だったダリにとっては乳母とナイトテーブルは同一の意味を持つ物だったのでしょうか。
二つを分けてしまう事で乳母は松葉杖で体を支えないと倒れてしまう存在になってしまったのでしょう。


「焼いたベーコンのある自画像」
ベーコンが示すのは日常、そしてダリ自身は溶けかけて幾本もの松葉杖で顔を支えている。
空洞になり眼球のない眼窩には蟻(ダリにとっては死の象徴、瀕死のコウモリにたかる蟻を見て死のイメージになったそうです)がたかっており、死を恐れるダリという意味なのでしょうか?


「奇妙なものたち」
なんとも表現しづらいです。赤と青と黒が印象的な絵ですが、かかれているものは全て奇妙で言葉にしづらい。
一言で言うと、ダリの心情風景を並べてみた、という感じです。
溶けた時計、女性、柔らかな形、引出し、大人と子供、など。